さて私はナイフを作っています。
自分の住居で作っているんですが、それが普通のアパートなんですよね。
そんなわけで騒音を出せないので、ヤスリやのこぎり等の手動工具のみで作っています。
汗だくになるほどやっても、削れない
ところでナイフ用の鋼材と言うのは、並のステンレスよりもずっと固いものが多いです。
刃持ちをよくするために摩耗にも強かったりします。
それはつまり、加工が大変ということです。
ステンレス用のノコギリやヤスリでゴリゴリやっても驚くほど時間がかかります。
汗だくになるくらい手を動かしても、全然作業が捗りません。
削る場所にもよりますが、広い面だと200往復くらいやっても、全然進んでないことはよくあります。
特に穴をあけるためのハンドドリルは、絶望感すら漂います。
仕上げの磨きも、ヤスリの傷跡がなかなか消えず永遠と思えるような作業になったりします。
自分の趣味でやっているんだけど、「私は何をやっているんだろうか・・・?」とふと思う瞬間もあるくらい大変なのです。
これはもはや苦行・・・否、瞑想なのでは?
そんななかある日、ふと思いました。
「これはもはや苦行・・・否、瞑想なのでは?鋼材を削っているのではない。
自分の肥大化したエゴを削っているのだ。
【過度に効率を求める現代のビジネス思考】を内面化して肥大化したエゴを、削り落としているんや!
さらにスマホなどによって瞬時に情報を得られる、注文すれば翌日には配達される現代において、人々は待つことが苦手になってしまった。
目先の快楽や成果を追い求め、本質的な成長や喜びから遠ざかってしまった。
そんな自分を鍛えなおしているんや!」
これを思いついた後、これは瞑想だと思ってヤスリを掛けてみました。
一回ずつ丁寧に、この瞬間を味わうように。
そうすると心が徐々に落ち着いてくるのを感じます。
穏やかさと静けさが心に現れてきます。
そして気が付いたら深く集中しており、あっという間に時間が過ぎていました。
そして作業も劇的に進んだと言いたいところですが、進みの遅さは相変わらずです。
しかし確実により美しく削れてはいますので、効果は抜群ということにしておきましょう。
よって結論、「ナイフ作りは瞑想である」